白鳥山 花と残雪の山
―春の栂海新道をちょこっと登る―
■実施日 5月22日(水) 天気快晴 山頂気温15℃
■参加者 13名
コースタイム
集合場所出発 6:00 → 森本IC → 朝日IC → 坂田峠駐車場 7:45~8:00 坂田峠 … 金時坂 … シキ割(水場) … 山姥平 …
ブナ林の尾根 … 白鳥小屋 11:00~12:40 (昼食大休憩)… シキ割 … 坂田峠 14:50 … 坂田峠駐車場 14:55 → 朝日IC →
森本IC → 集合場所帰着 16:30
白鳥山(1287m)は北アルプスの朝日岳から親不知に延びる山稜の末端部にある山で、栂海新道の1000m級最後のピーク。富山県と新潟県との県境に位置し、糸魚川市上路(あげろ)地区の背後にそびえることから「上路山」とも呼ばれていた。「上路」は「上の路」、つまり親不知・子不知の海沿いの危路「下路」に対して山側の道の意。かつては越中と越後を結ぶ要衝であり、坂田峠は旧北陸街道が通っていた。白鳥山の山名は山頂直下に現れる雪形からついたと言われている。また「上路」は「山姥の里」として知られている。山姥とは山中に住む鬼女。謡曲「山姥」は当地を舞台にしている。
上路に伝わる「山姥伝説」について興味がある方はhttps://souraku.jp/tsira1.html参照
(和田靖雄氏著作の個人HP「創楽」より一部引用)
栂海新道は日本海から朝日岳(2418m)までを繋ぐ登山道で、電気化学工業の技術者として糸魚川の工場に赴任した小野健氏が立ち上げたサワガニ山岳会が手作業で道を切り開き1971年に全線開通した。今も歩く人は少なく、荒らされていないのが魅力だ。昨夏、山岳ライター小林千穂さんがテレビ取材のためNHKクルーを伴って親不知からこの道を縦走の折、途中の朝日小屋で私たちと出会い一緒に写真に納まった。番組がノンカットで放映されるなど例会参加者には忘れがたい思い出となった。後立山連峰の北端は親不知で急峻に海に切れ落ちている。そこから登りはじめる栂海新道は白鳥小屋、栂海山荘、朝日小屋と3泊しなければ盟主白馬岳にたどり着けない。今回の例会は、小林千穂さんの大縦走のほんのさわりの一部で「春の栂海新道をちょこっと登る」にすぎなかったが、快晴の下、青い海が見下ろせる残雪の稜線歩きは極めて爽快であったし素晴らしかった。
坂田峠を歩き出して約1時間、階段やロープが続く金時坂の急登を過ぎれば背の低い樹間のゆるやかな登りとなる。雪が残る谷筋から日の当たる斜面を見上げるとコバイケソウやシダ類の陰に隠れるようにシラネアオイが可憐に咲いていた。薄紫色の花弁を風にふるわせて愛くるしい。しき割と呼ばれる雪渓の沢が流れる水場にはステンレスのコップが用意されていた。山姥平は豊富な残雪が一面に付き、新緑まぶしいブナの疎林と白いタムシバのふくよかな花が目を楽しませてくれた。ふり返れば眼下に日本海、視線を移せば火打山、焼山、金山、雨飾山のひとまとまりとやや離れて高妻山、戸隠の山塊も見える。行く手の栂海新道上部は犬ケ岳から朝日岳への山々が重層的に高まる。朝日岳の奥から右へ派生する清水岳のさらに右手に双耳峰のように見えたのは剱・立山である。どの山肌も残雪と地色がまだら模様で、この時期は雷鳥の羽のごとく冬から夏へ衣更えの真っ最中なのだ。白鳥山山頂に建つ避難小屋へと続く登山道脇にはカタクリが誇らしげに咲いていた。ひと月前にオンソリ山の麓を彩っていたこの花は、ひと月後の今標高1000mのこの場所で見ごろを迎えているのである。開花時期ひとつとっても気温と正確に連動する植物のDNAに組み込まれたプログラムに驚くばかりだ。
避難小屋付近で各自昼食をとった後、小屋の2階に全員で上がり、美味しいコーヒーとお菓子とお喋りでゆっくり過ごした。「こんな例会もたまには素敵ね」と言ってCSLを有頂天にさせる女性参加者あり、「前回来た時は景色も何も見えずただ寒かったわ」と二度目の参加をよろこぶ人もあり。また一つ楽しい思い出を胸に刻んだら、帰りは光る日本海が次第に近づいてくる往路を戻る。
坂田峠駐車場
白鳥山への登山口。栂海新道はこの反対側より親不知へと続いている
金時坂の急登を行く
谷筋に残る雪渓を対岸へ渡り返す。赤テープが下がっていて分かりやすい
可憐なシラネアオイを見つけ歓声が上がる
新緑のブナ林を行く
遠くに火打、焼山、金山、雨飾山
見事な花を付けたタムシバが随所にみられた
カタクリが見ごろを迎えていた
栂海新道上部の犬ケ岳から朝日岳方面を望む
目指す白鳥山と頂上避難小屋
避難小屋。綺麗に使われており宿泊が可能だ
小屋の2階から剱立山が双耳峰のように見える
帰りは往路を忠実に辿った。日本海が一歩一歩近づく
坂田峠に無事到着
駐車場でNさんの冷たくて美味しいアイスコーヒーが振舞われた