オンラインユーザー3人
ログインユーザー0人
訪問者数5157365
会員外の方も買物できます

 



 
























 

2012/09/27

個人山行報告 槍ヶ岳・奥穂高岳・西穂高岳縦走

Tweet ThisSend to Facebook | by 会員
個人山行報告     槍ヶ岳・奥穂高岳・西穂高岳縦走
日 時:平成24年8月26日(日)~28日(火)・晴れ

参加者:CL Yさん SL Mさん Nさん Kさん
留守宅:Iさん



8月26日(日)               
金沢東3:30-新穂高6:10~6:45-穂高平7:35-白出小屋8:15-滝谷9:30~9:40-槍平小屋10:40~10:57-分岐(2550m)13:00-千丈沢乗越(2730m)13:38~13:49-槍ヶ岳山荘15:08                                      
[車169km 歩行距離 約14km]・標高差1980m


 今回の山行は、初日に新穂高から槍ヶ岳まで歩いてまず1泊して、そこから大切戸とジャンダルムという北アルプスの代表的な岩稜帯を1泊2日で一気に歩くという計画になっている。2日ほど前に本会の別パーティとOさんがそれぞれジャンダルムを歩いており、Oさんの情熱が契機となって本会のメンバーが北アルプスの中でもとりわけ急峻な岩稜帯を相次いで歩くことになった。登攀具を用いずに歩くコースとしては、国内第一級のコースであり、急峻な稜線で事故を起こせば取り返しのつかないことになるので、入念な準備で臨んだ。
 新穂高のロープウェイの横を通り過ぎて、朝の涼しい林道を歩いて行くと、穂高平までショートカットする登山道があり、迷わずそちらを歩く。8:15に白出小屋を通る。今日、Oさんがテントを担いで降りてくるはずの場所である。心の中でOさーん、と感謝の声をかけて歩く。
 8:30を過ぎると、早くも暑さを感じるようになってくる(これは、3日間を通してそうであった)。滝谷の河原で涼しいところを選んで休憩する。滝谷からは、北穂高あたりの稜線だろうか、岩稜が見える。さらに50分ほど歩くと標高2000m弱の槍平小屋・テントサイトにつく。水が豊富で、炎天下を歩く登山者には天国のような場所だ。パイプから出しっぱなしになっている冷たい水をいただく。
 滝谷からは、標高差1000m弱の本格的な登りが始める。暑い。2時間ほどひたすら登ると、飛騨乗越方向の美しい稜線が見えてくる。標高2550m付近の分岐で左に折れ、少しだけ遠回りすることにした。奥丸山からの道に合流し、少し登ると千丈乗越(標高2730m)で西鎌尾根の最終部に合流する。静かな道でとても気に入った。
 今日のコースは、槍平小屋から登り一辺倒で、登るほどに傾斜がじわりときつくなっている。早立ちのせいもあって苦しさはこの
西鎌尾根の終わりあたりがピーク。体がしんどい(眠い)。初日はいつもこんな感じ(体が日常生活モードのまま)。槍ヶ岳山荘に着いたときは、心底嬉しかった。


西鎌尾根


8月27日(月)
槍ヶ岳山荘5:00-飛騨乗越5:05-大喰岳5:23-中岳6:00-南岳7:04-南岳小屋7:14~7:37-大切戸8:24-長谷川ピーク8:55-北穂高小屋10:25~11:30-北穂高岳11:40-涸沢岳13:30~14:00-穂高岳山荘14:15
[歩行 約10km]・累積登り約700m 大切戸:約270m下り約300m登る


 4:00少し前に起床。周りの方を起こさぬよう、静かに談話室に移動し、持参したパンと即席スープで朝を食べる(胃に持病のある私には、歩き始める前に食べてしまうことが大事)。前夜はしっかり休めた上に、生活時間が山モードになってきたので、今日は充実した一日にできそうだ。4:50にテントサイトでご来光を眺める。気温は5~7度くらいか。寒い。

 
槍ヶ岳山荘での夜明け

 5:00に足元が覚束ない大きな中高年団体さんが動き出した(小屋直下の歩き出しで、すでに足を取られて転倒しそうになる方が)。タッチの差で出遅れたが、我々も行動を開始する。団体さんは、飛騨乗越から下に降りるというので、(申し訳ないが)内心ほっとする。団体さんが新穂高に降りるのだとすれば、涼しい5:00から歩き始めるのは良いことで、立派なガイドさんがついているようだ。飛騨乗越からは、人がいない登山道を進む。人の多い北アルプスでは、人が動き出す前に行動を始めることが、思わぬ危険を避けることにもつながる場合がある。
 南岳小屋まで順調に歩く。ここからが大切戸の鞍部を目指して下る難コースの始まりである。雑穀谷で岩登りのお手本を示して下さった教育部のNさんが事前にアドバイスを下さっていて、掴まる場所・足を置く場所が崩れる可能性を意識して歩くとよいとのこと。このアドバイスは、後になって実に的確であることを実感した。大切戸・長谷川ピーク・飛騨泣きと難所が続く。チェストバックはザックに、カメラはポケットにしまって登り降りに集中する。2時間半くらいで必死に核心部を通過して、あとは北穂高小屋までの登りになった。
 岩場を登り切ったところが北穂高小屋である。「あと200m」の看板が出てからが長く感じた。見晴らしのよい北穂高小屋でラーメンを食べて1時間ほども休む。時間に余裕はある。涸沢岳でも30分ほど昼寝して、14:00過ぎに穂高岳山荘に着いた。
 
槍ヶ岳から穂高岳山荘までのコースを後になってから振り返ってみると、マーキングに従いコースを外さないことが絶対の条件で、鎖がついていても掴むことのできる岩があれば、鎖に頼り切らないで行動することが留意点である。しっかりとした足場が整備されているので、晴天でコースを外さなければ、それなりのレベルの山の経験がある方は、落ち着いて歩けば通過可能であろう。私たちは、鎖もほとんど使わず通過できた。今日のルートは、日本のヴィア・フェラータ (via ferrata) のようなものだと思った。ただし、ヴィア・フェラータと違うのは、確保するためのワイヤーはないということ。

(注)ヴィア・フェラータは、イタリア語で鉄路、日本語訳では登攀路。イタリア・ドイツ・オーストリアなどの急峻な岩山で、強固な足場と、太くがっしりとした確保用のワイヤがルート沿いに途切れなく続き、一般登山者が自己確保しながら登攀できるように整備されたコースを言う。via ferrataで検索すれば、世界各国に
via ferrata の思想で整備された有名コースが多数あって、via ferrata を登るツアー登山などがあることがわかります。ヨセミテのハーフドームに登るトレイルなども、ワイアーが手すりのように張られているので、ヴィア・フェラータのような思想の道かもしれません(距離は短いですが)。


南岳の小屋の少し先から北穂を見る


越えてきた長谷川ピークを振り返る


北穂のピークから振り返る


北穂を越えて目指す先


涸沢山頂までやってきた。奥穂が目の前に。あとは小屋に下るだけ。今日はここまでくれば、もう安心。


8月28日(火)                            
穂高岳山荘4:55-奥穂高岳5:35~5:43-馬の背-ジャンダルム6:58~7:25-天狗のコル8:35~8:44-天狗の頭9:05-逆層スラブ-間天のコル-間ノ岳10:00-P1 11:00~11:20-西穂高岳11:30-ピラミッドピーク12:15-西穂独標12:35~12:55-西穂山荘13:30~14:00-西穂高口15:00-新穂高15:40-入浴-金沢東19:30
 [歩行約9.3km  ※会報9月号に約8.3kmとあるのは誤りです。] 標高差約1030m


 前夜は、韓国人の団体が向かいの部屋で大声で酒盛りしていた。この人たちは朝3:00ごろからごそごそパッキングを始め、早立ちされた。韓国から日本まで山登りに来られるだけあって、パワフルな方たちである。3:45までは我慢して休み、周りの方を起こさぬよう静かに階下に降りて、前夜受け取った朴葉寿司をいただく。しっかり休むこと、朝をしっかり食べること。
 4:45ごろ外へ。朝の空気が心地よい(寒い)。小屋から奥穂に取り付き、急斜面を登る。つい山頂を通り過ぎそうになるが、標高3190mは、富士山・北岳に続く高峰である。続く馬の背は、これまでの歩きの中でも一番の難所。もろい牡蠣がらを連想する岩質で、自分の意思とは言え、朝の6時前からこれに取り付くとは何の因果だろう、と思いつつも、憧れのジャンダルムを目の前にして慎重に。ジャンダルムの手前、ロバの耳もなかなかのもの。昨日までの大切戸付近のコースとは、難易度が一段違うことを実感する(あとで振り返って見ると、難所の通過時間も2倍くらいに長い)。切り立った岩山から、ヨセミテの Cathedral Lakes Trail から見た Cathedral Peak (3326 m) を思い出す(今回のパーティには、Yosemite High Sierra Camps をテント山行したメンバー4名のうち3名がいる)。
 ジャンダルムは、北側を直登するコースもあるが、我々は一般者向けのコースに従い基部を巻いて、より登りやすい南側から登る。素晴らしい眺めに感動する。その場で一緒になった方と握手してお互いをたたえあう。一緒になった方は、ご自身のホームページで「ここまで歩いて来たものだけが分かち合える気持ち」という意味のことを書いておられて、まさにその通りであった。


※山頂で出会ったROOKIEさんのページ
http://rookie.h.fiw-web.net/hima/2012/20120828/20120828.htm

 
ジャンダルム山頂

 ジャンダルムの南、天狗のコルの手前から間ノ岳付近までも馬の背に匹敵する難所が続く。前述のOさんがKさんにメールで送って下さったアドバイスの通りだ。ガバがなく鎖もない(位置・形状は絶好のガバなのだが、岩が脆く浮いている)、全山が浮石だけで出来ているかのよう(!)、鎖が短い、鎖の支点が抜けていて体重をかけられない、掴む箇所・足場が身長180cm弱の報告者でも遠い、など。ここは、一般コースでないと痛感させられた。大切戸付近のコースなら確実に鎖がついているような斜面でも鎖がない箇所もある。先ほどは、「馬の背に匹敵する難所」と書いたが、難易度と言うよりは、確かな頼れるものがない不確定的な難しさ、とでも言うほうが適切でしょうか(この壁を確保なしで登るの?、この浮石だらけの壁や斜面を、上から来た人・下から来た人がすれ違いするの?と感じる箇所もあった)。石一個も落とさないように、猫になったつもりでしなやかに歩くが、これを維持するのが本当に難しい。西穂高岳やピラミッドピークまで来れば、難所が終わりに近づいたことがようやく実感できる。
 独標を越えて、西穂の小屋へ。ノン・アルコールビール一口ずつで乾杯する。冷たさが染み渡るようで、無事にここまできたことが本当に嬉しい。帰宅してから振り返ってみても、危険箇所の数々に身がすくむ思いがする。達成感もあるが、正直なところ、今になって怖さが込み上げてきて、へなへなと力が抜けた、という感じかもしれない(うまく言葉で表現できないが、わが金沢言葉でいえば、「あっくりした」というところでしょうか。ニュアンスも含めて東京弁に翻訳することは難しいかも)。これを読まれた皆さんも、天候が安定している時期にチャレンジしてみて下さい。
 ただし、うかつに人に勧めることが難しい場所だと思います。我々が味わった感動を皆さんもぜひとも、という気持ちと、わずかなアクシデントが何を引き起こすかわからない不確実性の怖さと。奥穂から西穂までのコースは、荒れたコースであることは確かです。一度歩けたからといって次にも歩ける保証がないかもしれない、と肝に銘じておきましょう。



奥穂からジャンダルムを目指して歩き出す。何ともないような場所だが、先には恐怖の馬の背が隠れている。


ジャンダルムと我らが白山


ジャンダルムからの槍。今日は360度の眺め。同行メンバーは、登山人生で最高の眺めかもしれない、と。


ジャンダルムから見た白山(だと思う)の望遠写真


上高地もすっきりと


今日は朝から富士山がずっと見えていた


天狗岳も越えて、ついに西穂のピークが見えた


西穂独標が見えてきた。一番左のピークかな?いよいよ終わりが近い。嬉しくもあり、寂しいような気もする。

※危険箇所ではカメラをしまっていたので、本当の危険箇所の写真はありません。絵文字:笑顔

(後日譚)
 この山行で愛用の登山用ズボンのお尻に穴があき、張り替えたばかりの登山靴のソールは、あっという間にカドが取れて丸くなりました。このソール、やわらかめでグリップ最高ですが、普段の登山の半年分くらいの磨耗が今回の三日間で起こったように思えます。帰宅してからも、日焼けで唇にはできものができて一週間くらい出血し、その後出張などもあって忙しい日々を送っていたところ、私が担当する例会の前日昼から急な症状が発生し、体重がその一日で4kgも減少する事態に。心身ともに疲れがどっと出てきたようでした。槍ヶ岳・奥穂高岳・西穂高岳縦走は、感動の山行であり、そして客観的に言えば、私の実力を超えた厳しいコースだったのでしょう。9月例会に穴を開け、ドタキャンの形になってしまい、多くの方にご迷惑おかけしたことをこの場をお借りしてお詫びいたします。



Y記(会報9月号発行日に合わせて公開)

21:54 | 投票する | 投票数(2) | コメント(0)